いざという時にその人物の真価が現れる。
3月11日以降、確かにその通りだと思わされる経験を、もう何度も繰り返した。
ここに新たな一例が。4月16日付朝刊の片隅に、日本文学の研究者でコロンビア大学名誉教授のドナルド・キーン氏が、日本への帰化を決意したことを伝える記事を見つけた。
その記事は、同氏が東日本大震災に心を痛め、震災後、多くの外国人が日本を離れていることを残念がっているとも、報じていた。
氏は、日本文学や日本文化を扱った英語と日本語の数多くの著書を持ち、三島由紀夫などとも深い付き合いのあったことは、よく知られているだろう。
その彼が、震災を機に、日本国籍を取得して、日本に永住する考えを固めたという。
キーン氏は現在、88歳。その高齢の身で、福島第一原発の事故がまだ収束せず、今後の地震についても予断を許さない現時点で、長年住み慣れ、名声を得たアメリカを離れ、日本に移り住み、新しく日本人になろうと決めたのだ。
生半可な気持ちで出来ることではない。
氏がこれまで語って来た日本への思いは、決して偽りでなかったことが、揺るぎなく証明されたと言えよう。
これまで日本に帰化した人たちの中で、恐らく最高齢になるのでは。
それにしても、キーン氏をはじめ、優れた人物が多く日本に帰化する事実を、どう考えるか。
日本人は自らの祖国をもう一度、見直す必要があるのではあるまいか。